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こんにちは。サーフボード社長の北野です。
私はWeb制作会社のサーフボードと、株式会社ノースフィールドの代表を務めています。最近、その両方の仕事に関わる、考えさせられる記事を読みました。
クーリエ・ジャポンが報じた、欧州の古書店に入る不可解な大量発注と、その背景にあるとされるAIの存在についての記事です。古書を集めてデジタル化し、AIの学習に使った後、現物を破棄しているのではないかという内容でした。元記事はこちら
ただし、記事で取り上げられた企業は、自社でのデジタル化や破棄を否定しています。個々の本の最終的な用途まで確認されているわけではありません。TAZの取材記事
本が大量に買われ、最後には破棄される。そう聞けば、「文化を壊す行為ではないか」「本を捨てるなんてひどい」と感じるのは自然なことだと思います。
ただ、古書の現場にいる私には、それだけでは捉えきれない事情も見えます。
私たちの現場では、本への需要が細っていくと感じる一方で、手放される本は次々と出てきます。高齢化に伴う蔵書の整理や、読まれなくなった本の片付けなど、まるで湧き水のように中古本が市場へ流れ込んできます。
しかし、入ってくる本のすべてに、次の買い手がいるわけではありません。
希少性があり、探している人がいる本は別として、私が現場で見ている限り、多くの本は価格を下げてもなかなか売れません。特に、かさばる本や重量のある本は、保管場所や送料の負担も大きくなります。内容に価値があっても、商品として流通させ続けることが難しい本があるのです。
そして、そうした本は日々、処分されていきます。
本を売る仕事をしているのか、それとも毎日本を廃棄することが仕事なのか。そんな気持ちになることさえあります。
ですから、「新たな買い手が現れなければ、その本は大切に保存され、いつか誰かに読まれていた」とは、必ずしも言えません。買い手がつかず、処分せざるを得ない本が、すでにたくさんある。それが、私たちが向き合っている状況です。
この現実を知る立場からすると、これまで動かなかった本に新しい需要が生まれることは、率直に、とてもありがたいことだと感じます。
誰かが読むためでも、研究のためでも、新しい技術に役立てるためでも。従来とは異なる用途であっても、必要とされなくなっていた本に使い道が生まれることには意味があると思います。
売上が生まれれば、働く人の雇用や倉庫を維持し、次の本を受け入れていく支えにもなります。古書業界の仕事を続けていくうえで、新しい需要の存在は小さくありません。
もちろん、希少な本や地域の記録など、将来に残すべき資料への配慮は必要です。また、AIの学習に使うことと、人が原典を読み返せる形で保存することは、目的が異なります。著作者の権利や、知識を後世に残すことの大切さを、軽く考えているわけではありません。
そのうえで、すでに廃棄へ向かっていた本に新しい使い道が生まれる可能性も、同じように見てほしいと思っています。
そして、この話は、もう一つの仕事であるWeb制作にもつながります。
AIの進歩によって、文章を書くことや、デザイン、システム開発など、私たちが携わる仕事のあり方も変わっていくでしょう。効率が上がる恩恵がある一方で、これまで人に依頼されていた仕事が減る可能性もあります。
古書の新たな需要についても、今はありがたくても、その先で生成AIが発展し、私たち自身の仕事を圧迫することになるかもしれません。将来、自分たちの首を絞めることになる可能性も、ないとは言えないと思っています。
ただ、一社の都合で、時代の大きな流れを止めることはできません。
将来への不安はあっても、今、目の前に生まれている需要まで否定する気にはなれません。私は、その需要に応え、恩恵をありがたく受け取りたいと考えています。
同時に、今回の話は、私たちが持っている知識や経験の価値を見直すきっかけにもなります。
長く売れなかった本にも、必要とされる知識が眠っているかもしれません。企業のなかにも、日々の工夫や、熟練した社員の判断、お客様に対応してきた経験など、外からは見えにくい価値があります。
そうした価値を見つけ、必要としている人へつなぐことは、古書リユースにも、Web制作にも共通する仕事だと思います。
サーフボードでも、お客様の経験や強みを丁寧にくみ取り、伝わるWebサイトや、仕事に役立つ仕組みへとつなげていきたい。新しい技術の恩恵を受けながら、その時代に求められる役割を担っていきたいと思っています。